Bitcoinを持っている人が次に考えるのは、「持ち続ける」以外に選択肢はあるのか、という点です。売却すればBTCの保有は終わり、置いておくだけなら数量は変わりません。売らずに保有したまま使う方法をまとめて指す言葉が、BTCFiです。

この記事では、BTCFiという言葉が何を指しているのか、リターンがどこから生まれるのか、そして「誰がBTCを持っている状態なのか」という観点を整理します。個別サービスの利率や手順は扱いません。当サイトはCore DAOや各サービスの公式サイトではないため、実際に利用する場合は公式情報で現在の条件を確認してください。

BTCFiとは

BTCFi(ビットコインファイ)は、BitcoinとDeFi(分散型金融)を組み合わせた造語です。

言葉の使われ方には幅がありますが、この記事では、BTCFiを「BTCを対象とした分散型金融(DeFi)の領域」として扱います。 スマートコントラクトやブロックチェーンのプロトコルを通じて、BTCまたはBTCに連動する資産を運用する仕組みが対象です。

一方で、中央集権の事業者へBTCを預けて利回りを受け取るサービスは、BTCの運用手段として比較の対象にはなりますが、**この記事ではBTCFiそのものとは分けて扱います。**仕組みも、確認できる範囲も、引き受けるリスクの性質も異なるためです。この区別については後述します。

なお、どこまでをBTCFiに含めるかについて、業界共通の公式な標準定義があるわけではありません。上記は当サイトが採る整理です。

言葉の定義よりも実務上重要なのは、次の2点です。

  • そのリターンは、どこから来ているのか
  • その間、BTCは誰が管理しているのか

BTCFiという言葉自体は、この2点について何も保証しません。

「持ち続ける」と「運用する」の違い

最初に、はっきりさせておくべきことがあります。

Bitcoinは、保有しているだけで自動的に増える資産ではありません。

Core公式ドキュメントも、BitcoinがProof of Stakeのチェーンのようなネイティブの利回りを生まない点を、BTCFiが必要とされる前提として説明しています。ウォレットに置いたBTCの数量は、送受信しない限り変わりません。

したがって、BTCで何らかのリターンが発生している場合、そこには必ずBitcoinの外側にある仕組みが関与しています。別のブロックチェーン、スマートコントラクト、あるいは事業者です。

BTCを持ち続ける BTCFiで運用する
数量の変化 送受信しない限り変わらない 仕組みに応じてリターンが発生し得る
関与する相手 なし(自分のウォレットのみ) プロトコル、スマートコントラクト
主なリスク 価格変動、鍵の紛失、盗難 上記に加え、仕組みごとのリスク
引き出しの自由度 いつでも動かせる ロックや待機期間がある場合がある

「運用する」とは、リターンと引き換えに、新しい種類のリスクを引き受けるということです。増えるかどうかだけでなく、何を引き受けるのかをセットで見る必要があります。

BTCFiでリターンが生まれる主な構造

BTCFiとして語られるものは、リターンの生まれ方で分けると、大きく3つの型に整理できます。名前がサービスごとに違っても、構造はこのどれかに当てはまることが多くあります。

ステーキング型

BTCを一定期間ロックし、そのブロックチェーンのセキュリティやコンセンサスへ貢献した対価として報酬を受け取る形です。

Coreのセルフカストディアルなビットコインステーキングは、この型に当たります。公式ドキュメントによれば、BTCはBitcoinネットワーク上でタイムロックされ、Coreへ送られることもラップされることもありません。報酬はBTCではなくCOREで支払われます。

重要なのは、報酬の原資がBitcoin側ではなく、受け取る側のチェーンにあるという点です。

レンディング型

BTCまたはBTCに連動した資産を貸し出し、借り手が支払う利息を受け取る形です。

利息の出どころは明快で、借りた誰かが払っています。したがって、借り手がいなければ利息は生まれず、金利は需給の影響を受けます。

また、DeFiのレンディングでは、借入時に担保を差し入れる過剰担保型が広く使われています。この型では、担保価値が一定の基準を下回ると、第三者が債務を返済して担保を取得する「清算」が行われる仕組みが一般的です。Core上のColendも、Health Factorが基準を下回ったポジションについて同様の仕組みを公式ドキュメントで説明しています。

清算条件や基準値はプロトコルごとに異なるため、借入を伴う運用では、利用するプロトコルの公式ドキュメントで確認してください。具体例はColend Loop Strategyの仕組みと清算リスクで扱っています。

流動性提供型

DEX(分散型取引所)などに資産を預け、そこで発生する取引手数料の一部を受け取る形です。

手数料は取引が起きたときに発生するため、リターンは取引量に依存します。また、預けた2種類の資産の価格関係が変化すると、単に持っていた場合より価値が目減りすることがあります(一般にインパーマネントロスと呼ばれます)。Core上のMoltenも、集中流動性における価格レンジの管理とインパーマネントロスを、公式ドキュメントで確認すべき点として挙げています。

ラップとブリッジは、利回りの仕組みではない

BTCを別のチェーンで扱うために、BTCを預けて対応するトークンを発行する仕組みがあります。ラップやブリッジと呼ばれるものです。

ここを型のひとつとして数えないのは、それ自体がリターンを生まないからです。ラップやブリッジは、BTCを別のチェーンやDeFi環境で使える形に変換するための、資産表現とアクセスの手段です。リターンは、移動先で参加するレンディングや流動性提供から生まれます。

そのため、この経路を使う場合は、次の2つを分けて確認します。

  • BTCを預けて別チェーンのトークンを受け取る部分(誰が原資産を保管し、どう裏付けられているか)
  • 移動先のチェーンで参加する仕組みそのもの(上記3型のどれか)

リスクも2段構えになります。CoreにもBridgeの仕組みがあり、資産の移動には対応状況の確認が必要です。

BTCFiと比較される、カストディアルな運用

事業者やサービスへBTCを預け、その事業者が提示する条件でリターンを受け取るサービスもあります。BTCの運用手段としてBTCFiと並べて比較されることが多いものです。

この記事でBTCFiの構造と分けているのは、資産へのアクセスを誰が管理するかが異なるためです。カストディアルなサービスでは、事業者や第三者がウォレットや資産へのアクセスを管理します。そのため、秘密鍵とアクセスを利用者自身が管理するセルフカストディとは異なり、利用者はその管理主体を信頼する必要があります。

どちらが優れているという話ではありません。後述のカストディの観点で、何を引き受けるかが変わる、という理解が出発点になります。

利回りはどこから生まれるのか

型を並べたところで、共通する見方を整理します。

構造 リターンの源泉 支払う主体
ステーキング型 チェーンが発行する報酬 対象のブロックチェーン
レンディング型 借入利息 借り手
流動性提供型 取引手数料 取引を行った利用者
(参考)カストディアルな運用 事業者が提示する条件 事業者

源泉を説明できない利回りは、リスクの所在も説明できません。 サービスの説明に数字だけがあり、その数字がどの活動から生まれているのか書かれていない場合、確認すべき点が残っていると考えるのが安全です。

なお、多くのプロトコルやサービスでは、表示される利率や報酬率は需給、取引量、ネットワークの状態、ガバナンスによる変更などの影響を受けて変動します。当サイトでは、変動する利率や比率を記事へ固定掲載しません。

誰がBTCを管理しているのか

BTCFiを見るうえで、利回りと同じくらい重要な観点があります。運用している間、そのBTCへアクセスする権限を誰が持っているのかです。

大きく2つに分かれます。

  • カストディアル:事業者やサービスへBTCを預ける。秘密鍵と資産へのアクセスは相手が管理する
  • セルフカストディアル:秘密鍵と資産へのアクセスを、利用者自身が管理し続ける

セルフカストディの中心にあるのは、秘密鍵と資産へのアクセスを自分で管理しているかどうかであり、資産がどのチェーン上にあるかではありません。

この違いは、利回りの高低とは別の軸です。預けた場合は、相手が破綻したり出金を停止したりする可能性を引き受けます。預けない場合は、鍵の管理と操作の責任を自分で引き受けます。どちらにも引き受けるものがあり、一方が常に優れているわけではありません。

Coreのセルフカストディアルなビットコインステーキングは、この考え方をBitcoin側で実装した例です。公式ドキュメントとホワイトペーパーの説明では、利用者は秘密鍵の管理を手放さず、BTCはBitcoinネットワーク上でタイムロックされます。Coreへのブリッジ、ラップトークンへの交換、第三者への送付はいずれも行いません。

ただし、これは「リスクがない」という意味ではありません。タイムロック中は動かせず、期間終了後に使うには償還の操作が必要で、Bitcoinネットワークの手数料もかかります。

自分で管理する側を選んだときに何を持つことになるのかは、セルフカストディとは|秘密鍵とシードフレーズを自分で持つということで扱っています。

先に確認したい主なリスク

BTCFiに共通して確認すべき点を、入口として挙げます。個別の詳細は、それぞれの記事で扱います。

  • スマートコントラクトのリスク:コントラクトの不具合や攻撃により資産が失われる可能性があります。監査の実施は、安全性の保証ではありません。
  • ブリッジ・ラップのリスク:BTCを別のチェーンで扱う仕組みには、預け先と移動先の両方にリスクがあります。
  • 清算のリスク:借入を伴う仕組みでは、担保価値の下落により持ち高が処分されることがあります。
  • カストディのリスク:預けた先の破綻、出金停止、方針変更の影響を受けます。
  • ロック・待機期間:ロック中や解除待ちの期間は、資産を動かせません。値動きに対応できない期間が生じます。
  • ウォレット操作のリスク:偽サイトへの接続、内容を確認しない署名、不要なトークン承認は、仕組みが健全でも資産の喪失につながります。
  • 報酬資産の価格変動:報酬が預けた資産と別のトークンで支払われる場合、受け取る価値はそのトークンの価格に左右されます。

リスクの一覧を読むこと自体が目的ではありません。それぞれについて「どこを見れば確認できるか」を持っておくことが、実際の判断につながります。

CoreはBTCFiのどこに位置するか

Coreは、BTCFiを実現する方法のひとつです。唯一の方法でも、標準でもありません。

Core公式ドキュメントは、CoreをBitcoinを補完するEVM互換のLayer 1ブロックチェーンとして説明しています。Satoshi Plusというコンセンサスにより、Bitcoinマイナーが委任したハッシュパワー、Bitcoin上でタイムロックされたBTC、委任されたCOREの3つがバリデータの選出に反映されます。

この記事の観点から見ると、Coreの特徴は次の点にあります。

  • BTCをCoreへ移さずに、ステーキング型へ参加できる仕組みを持つ
  • 報酬はCOREで支払われる
  • EVM互換であるため、その上でレンディングやDEXなどの個別プロトコルも動く

3つ目は重要です。Coreというチェーンの仕組みと、その上で動く個別サービスは別のものであり、安全性も別に判断する必要があります。

Coreそのものの構造はCoreとは?Bitcoinと連携するEVM互換Layer 1の仕組みで、コンセンサスの詳細はSatoshi Plusとは?DPoW・BTCステーキング・DPoSの仕組みで扱っています。Core上でサードパーティの基盤を使う例としては、b14gとは?Merge MarketplaceとdualCOREの仕組み・リスクがあります。

どこから読み進めるか

この記事は全体像を示すためのものです。次に読む記事は、いま知りたいことによって変わります。

知りたいこと 次に読む記事
Coreとはどんなチェーンなのか Coreとは?Bitcoinと連携するEVM互換Layer 1の仕組み
実際に何から始めるのか Coreの始め方を3ステップで解説
バリデータ選出の仕組み Satoshi Plusとは?DPoW・BTCステーキング・DPoSの仕組み
借入を伴う運用のリスク Colend Loop Strategyの仕組みと清算リスク
サードパーティ基盤の検証例 b14gとは?Merge MarketplaceとdualCOREの仕組み・リスク

まとめ

この記事では、BTCFiを「BTCを対象とした分散型金融の領域」として扱いました。業界共通の標準定義がある言葉ではないため、範囲を決めたうえで読む必要があります。

Bitcoin自体は保有しているだけで増える資産ではないため、リターンが生じている場合は必ず外側の仕組みが関与しています。リターンが生まれる構造は、ステーキング型、レンディング型、流動性提供型の3つに整理できます。ラップやブリッジはこれらへ参加するためのアクセス手段であり、それ自体が利回りを生むものではありません。中央集権の事業者へ預ける運用は、比較の対象ではあっても、確認できる範囲の性質が異なります。

もうひとつの軸が、運用中に秘密鍵と資産へのアクセスを誰が管理しているかというカストディの違いです。Coreのセルフカストディアルなビットコインステーキングは、鍵の管理を手放さずBTCをBitcoin上に残したまま参加する方式ですが、ロック期間や償還の操作といった確認事項があります。

利率の数字ではなく、「この利回りはどこから来て、いまBTCは誰が管理しているのか」を確認できる状態から始めてください。